AIに”うっかり”機密を話させないために──渡す情報を、必要な分だけに
前回は、AIが「読んだ文章を指示だと思ってしまう」性質を突いた攻撃について書きました。では、どう備えればいいのか。今日は、その中でも一番効く考え方をお伝えします。
それは、そもそもAIに渡す情報を、必要な分だけにしておくということです。
「取られて困るものが、そこにない」状態をつくる
考え方は、とてもシンプルです。
前回お伝えしたような攻撃を、完全に防ぐ技術は、まだ確立されていません。AIを開発している大手の会社も、この課題に取り組んでいる最中です。
だとすれば、私たちにできる一番確実な備えは、「もし何かあっても、そこに大したものがない」という状態をつくることです。
金庫の鍵を破られない工夫も大事ですが、そもそも金庫に入れる必要のないものは入れない。そちらの方が、確実で、しかも今日からできます。
資料は「全部」ではなく「必要な部分だけ」渡す
具体的な場面で考えてみましょう。
たとえば、社内資料をAIに読ませて要約してもらうとき。つい、ファイルをまるごと渡してしまいがちです。でも、本当に要約したいのは、その中の一部ではないでしょうか。
- 契約書全体ではなく、確認したい条項の部分だけ
- 顧客リスト全体ではなく、今回の作業に必要な項目だけ
- 議事録全体ではなく、まとめたい議題の部分だけ
必要な部分だけをコピーして渡す。このひと手間で、万一のときに関わる情報の量が、大きく変わります。
しかも、副次的な効果もあります。余計な情報を渡さない方が、AIの答えの精度は上がります。「あれもこれも読ませたのに、欲しい答えが出てこない」という経験がある方は、渡す情報を絞ってみてください。
用途によって、使い方を分ける
もう一つの工夫は、AIの使い方を、用途によって分けることです。
一つの場所に、社内資料も、顧客情報も、日常の相談も、すべて放り込んでいくと、そこは会社の情報が集まった場所になっていきます。
そうではなく、たとえば「社外に出しても問題ない作業(文章の言い換え、アイデア出し)」と、「社内情報を扱う作業」で、使うアカウントや会話を分けておく。それだけでも、情報が一箇所に集中することを避けられます。
大がかりな仕組みは要りません。「この会話では社内情報を扱わない」と決めておくだけでも十分です。
社内で使うなら、範囲を決めておく
社員の方にAIを使ってもらう場合は、この考え方をルールにしておくと確実です。
「社員にAIを使わせるとき、先に決めておきたい「社内ルール」」でも書きましたが、AIに読ませてよい情報の範囲を決めておく。それだけで、一人ひとりが判断に迷わなくなります。
ルールというと堅苦しいですが、要は「どこまで見せていいか」を全員で共有しておく、ということです。
まとめ
AIをだます攻撃を、技術で完全に防ぐことは、今のところ誰にもできません。だからこそ、渡す情報を必要な分だけにするという備えが効いてきます。
守りを固めるのではなく、守るべきものを減らす。地味ですが、今日から誰でもできて、しかも一番確実な方法です。
自社の場合、どこまで渡してよいのか。判断に迷ったら、お気軽にご相談ください。